高校生・学類1年生の皆さんへ
数物科学類 計算科学発展プログラムとは?
「数物科学」と聞くと、名前のとおり、高校で学ぶ、数学、物理学のことかと思われるかもしれませんが、金沢大学 理工学域 数物科学類には、数学・物理学に加えて計算科学に関する教育プログラムがあります。なぜでしょう?数学、物理学は共に歴史の古い学問です。一方、計算科学はとても新しい学問です。学問の対象は数学、物理学と同じ、もしくはそれらより対象が広いのですが、その手法に大きな違いがあります。名のとおり、コンピュータによる「計算」手法を主に用います。この手法はとても新しく、例えば計算科学の手法を用いて、物理学の研究がおこなわれるようになってから、100年も経っていません。数学、物理学の実験・理論の手法は紀元前から少しづつかけて発展してきました。それに比べれば、計算科学の手法の発展は、まだはじまったばかりです。このため、新しいことに対する順応性の高い、若い人が活躍できる学問分野であります。ぜひ、大学入学を機に計算科学という新しい分野へ挑戦してみてほしいと思います。
計算科学発展プログラムとは?(新しい理論物理学の教育プログラム)
大学1年生で数物科学類の学生は、数学・物理学・計算科学の基礎を学びます。大学2年生に進学後は数学系・物理学系に分かれ、それぞれの基礎プログラムで数学・物理学の基礎を学びます。その後、物理学の基礎を学んだ学生は、物理学発展プログラムと計算科学発展プログラムのどちらかを選択します。計算科学発展プログラムは、一言でいうと、新しい理論物理学(コンピュターシミュレーションを主におこなう)の教育プログラムになっています。物理学発展プログラムと計算科学発展プログラムの大きな違いは物理学発展プログラムでは実験装置を主に用いた「物理実験」という科目が前後期ともに必修科目になっているのに対し、計算科学発展プログラムでは装置を用いた「物理実験」の代わりに紙・鉛筆・コンピュータを用いて物理学の理論を実践的に学び、コンピュータによる実験(コンピュータシミュレーション)の手法を身につける「計算科学実験」という科目が必修科目となっています。
新たなる理論ミニマム。思考実験と計算実験。
従来の理論物理学者は自然現象を理解するために、思考実験をおこない、様々な模型、仮定を導入し、紙と鉛筆で数式を用いて実験で観測できる物理量を計算し、その理論が正しいか否かを検証します。そして、実験で観測されていない未知の現象を予言・予測します。ノーベル賞を受賞した物理学者にランダウというロシア人の理論物理学者がいます。彼は同じくロシア人の理論物理学者のリフシッツ等と一緒に「理論物理学教程」なる、理論物理学者養成のための教科書を執筆しています。その元になったのが、1930年代以降にランダウが弟子を養成するのに考案した「理論ミニマム」という教授要目です。詳しくは「ランダウの生涯(東京図書,1973)」にあります。
ランダウは物理学の何を学んだらよいか悩んでいる若者に次のように手紙を書いています。
「あなたが何を学ばなければいけないのかは、一にかかってあなたの将来のプランによります。というのは、現代の物理学者には二つの範疇、理論物理学者と実験物理学者があるからです。理論物理学者はペンで紙に数式を書き、一方、実験物理学者は実験室で装置を使って研究します。したがって、この二つの部門に要求される教育は完全に同じではありません。」
現代では、この理論ミニマムに計算実験・計算科学の手法を加える必要があるでしょう。計算科学の手法は主に二つに大別されます。一つは宇宙の天体を扱う重力多体計算、気体・液体・固体などを扱う分子動力学法に代表される「決定論」的な手法で、もう一つは素粒子から社会現象まで幅広い現象を扱うモンテカルロ法に代表される「確率論」的な手法です。これらはそれぞれ、計算科学序論1と計算科学序論2で学びます。また、これに続く、計算科学実験1, 計算科学実験2では、流体力学, 熱・統計力学、量子力学の基礎理論を実践的に学びます。また並列化等, スーパーコンピュータを駆使するための計算技術も学びます。これらの科目によって、あらゆる研究対象を理論・コンピュータシミュレーションで扱う基礎力が養成されるでしょう。
物理学の枠を飛び出して、学際分野・計算科学へ
計算科学の手法は、物理学の全ての分野のみならず、化学、生物学、地球科学、工学、医学、薬学、社会科学まで、拡大し続けています。そのため、大学・公的な研究機関のみならず、一般企業での研究職でも計算科学を専門とする研究者の需要は高まっています。また、普通教育や高等教育における理科の教授法・教材開発においても、計算科学の手法は、新たな展開をもたらすでしょう。
しかし、全国の大学で学部レベルから大学院まで一貫して計算科学を専門に学べるのは金沢大学だけです。
「金沢大学 理工学域 数物科学類 計算科学発展プログラム」で、
理論物理学・計算科学を学んでみませんか?